Sandiskが2030年まで粗利益率80%が続くと発表、他の半導体メモリ企業の低PERは解消に向かうのか(金融日記 Weekly 2026/8/7-2026/8/14)
公開日: 2026年8月16日 X
| TOPIX: | 4197.20, | +3.0% (1w), | +22.5% (YTD) |
| Nikkei225: | 68713.80, | +4.7% (1w), | +36.5% (YTD) |
| S&P500: | 7785.76, | +0.4% (1w), | +13.7% (YTD) |
| USD/JPY: | 159.35, | +1.0% (1w), | +1.9% (YTD) |
| EUR/JPY: | 184.34, | +1.1% (1w), | +0.3% (YTD) |
| Oil(WTI Futures): | 82.40, | +5.4% (1w), | +43.5% (YTD) |
先週(8月7日-14日)の株式市場は、日本株とメモリ半導体株が大きく買われる一方、米国の巨大テック株にはやや一服感が出る展開となった。週間ではTOPIXが3.0%、日経平均が4.7%上昇したのに対し、S&P500は0.4%高にとどまった。米国ではCPI、PPIが比較的落ち着いたことでFRBの追加利上げ懸念が後退し、13日にはS&P500が最高値を更新したが、翌日は弱い小売売上高とイラン情勢を受けて反落した。日本ではキオクシア(+12.6%)、アドバンテスト(+14.5%)など半導体株が大きく上昇し、米国でもMicronが10.7%高となった。ドル円は159円台へやや円安に戻り、ホルムズ海峡を巡る緊張再燃からWTI原油先物は週間で5.4%上昇した。
イラン戦争は、米国にとってかなり困った展開になってきた。6月の合意後に一部回復していたホルムズ海峡の航行は再びほぼ停止し、14日には通常なら戦前に1日130隻以上が通過していた海峡を、確認できた船舶は数隻しか通れない状態となった。イランは米国やイスラエルなど「敵対国」の船舶や装備の通航を禁止する制度まで進めており、海峡を開けたり閉めたりすること自体が交渉上の巨大なカードになっている。米国はイランへの海上封鎖と経済制裁を強めているが、それでもイランを交渉のテーブルに戻せていない。
さらに深刻なのが弾薬である。米軍はこの半年ほどの戦争でATACMSや次世代のPrSMといった長距離精密ミサイルを「ほぼすべて」使い、Tomahawkも世界在庫の半分近くを消費したと報じられている。迎撃側でもPatriotの約65%を使ったとの推計があり、再び大規模攻撃を行えば、対中国など他正面の抑止力を削ることになる。もちろん米軍には依然として圧倒的な戦力があるが、イラン政権を屈服させられず、ホルムズ海峡も自由航行に戻せず、貴重なミサイルだけを大量消費した現在の状況は、筆者には戦略的には米国の事実上の敗戦へ近づいているように見える。米国は潔く損切りして、イランに大幅に譲歩してでも何らかのディールを作り、米軍が撤退して曲がりなりにも中東情勢が安定する方が、世界経済にとっても株式市場にとっても好ましい。
さて、今週の株式市場でもっとも重要だったニュースはSandiskのInvestor Dayだろう。同社はFY2028-FY2030の平均的な財務モデルとして、売上高を年率で中~高10%台成長させながら、Non-GAAP粗利益率を約80%、営業利益率を約75%、調整後フリーキャッシュフロー・マージンを約50%に維持するという、圧倒的な数字を正式に提示した。これは「いまNAND価格が高いから儲かっている」という話ではなく、2030年まで高収益を持続可能なものとして経営計画を組んでいるということである。Sandisk株はInvestor Day当日に13.7%上昇し、翌日も7%超上昇した。
★SandiskのInvestor Dayで、メモリ企業への市場の見方が変わった。
https://x.com/kazu_fujisawa/status/2089042505681805350
●週刊金融日記 第743号 メモリ半導体の需要と供給について分かっていることを整理します、他
https://www.kinyuunikki.com/newsletter/Vol743-20260811-MemoryChipSupplyDemand.html
その自信の背景にあるのが、Sandiskが新たなビジネスモデルと呼ぶ長期供給契約である。すでにハイパースケーラーを含む8社と契約し、平均契約期間は4年以上、月ごとの数量や製品だけでなく価格の床と上限まで設定し、保証も付けている。これによりFY2027の供給量の約50%、FY2028には約3分の2が長期契約でカバーされる。従来のNAND企業は価格が上がれば設備投資を増やし、数年後に供給過剰となって暴落するという典型的なコモディティ企業だった。しかし、長期契約を裏付けに需要を確認してから能力を増やすなら、このサイクルの振幅そのものを小さくできる可能性がある。
これはキオクシアをはじめとするメモリ半導体株全体に大きなインプリケーションがある。とりわけSandiskとキオクシアは四日市と北上で巨大なNAND製造JVを共有し、同じBiCS世代のウエハーを基本的に折半している。したがって、Sandiskが示したAI推論需要、設備稼働率、ビット当たり原価低下という製造側の経済は、かなりの部分がキオクシアにも波及する。Sandisk独自の長期契約、コントローラー、ファームウェア、後工程、ブランド力は、キオクシアと同じではないが、その点で、キオクシアが劣後しているとも思えず、むしろキオクシアが優位である点も多い。重要なことは、両社が共有するNANDそのものの高収益が、市場が考えていたよりずっと長く続く可能性が示されたことである(筆者は懐疑的な市場と違って首尾一貫してメモリ株には強気だ)。
メモリ株のPERが異常に低い理由は、市場が現在の巨額利益を「サイクルのピーク」と考え、数年後には崩れると見ているからだ。FY2027予想PERはSandiskで約8倍、キオクシアではわずか5倍である。ところがSandisk自身が、FY2030まで粗利益率約80%という長期モデルを公式に出してきた。もし今の利益がピークではなく、高水準の利益が数年続くのであれば、この低PERは利益予想の上方修正だけではなく、PERそのものが切り上がる「ダブルのリレーティング」を引き起こす可能性がある。今週Micronが10.7%、キオクシアが12.6%上昇したのは、その第一歩なのかもしれないが、まだ十分には織り込まれていない。
AIインフラ需要の強さを示したのはメモリだけではない。光通信部品のLumentumはAIデータセンター需要を背景に強い決算を発表し、LenovoもAI関連事業が急拡大し、全社売上高は前年同期比43%増となった。Applied MaterialsもAIの世界的な普及による半導体製造装置需要を理由に、2026年の売上見通しを大幅に引き上げている。GPUからHBM、NAND、光通信、製造装置まで、AIデータセンター建設の恩恵がサプライチェーン全体へ広がっている構図は変わっていない。筆者のAI半導体への強気の見方は、むしろ今週さらに強まった。
今週は17日に日本の4-6月期GDP、中国の小売売上高・鉱工業生産などが発表され、19日には7月FOMCの議事要旨が公表される。米雇用の弱含みと落ち着いたCPI・PPIを受け、市場はFRBの追加利上げをかなり警戒しなくなっているだけに、議事要旨ではインフレ警戒派がどこまで残っているかを確認したい。また21日には日本の7月CPIが発表される。強いGDPと高いCPIが重なれば9月の日銀の追加利上げ観測がさらに強まり、円高要因となりうる。
●トランプ米政権、対イランで出口失う「3つの圧力」いずれも通じず
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN142NJ0U6A810C2000000/
●米軍、高性能ミサイル枯渇の危機 対イランで防空弾は3分の1に激減
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN07BMY0X00C26A8000000/
●アングル:中国製電動トラックに追い風 イラン戦争による燃料高騰で輸出急増
https://jp.reuters.com/economy/WSR5WODEANNQLI7G2IEXEVE3KY-2026-08-14/
●米7月CPI 3.4%上昇に鈍化、ガソリン安続く コアも落ち着き
https://jp.reuters.com/markets/japan/MNMVKANHTRPE3P6GIUGQ4RXESM-2026-08-12/
●米7月PPI、前年比4.7%上昇に伸び鈍化 FRB据え置き観測強まる
https://jp.reuters.com/markets/japan/4RAKPLNXKRIAZO4XLI4IDIMXUM-2026-08-13/
●SANDISK: INVESTOR DAY IN FOCUS 2026
https://investor.sandisk.com/static-files/c050c0a0-91fe-4186-bb34-3b331378060f
●SanDisk unveils long-term growth strategy at 2026 Investor Day; Shares surge 12%
https://finance.yahoo.com/technology/ai/articles/sandisk-unveils-long-term-growth-155043486.html
●Lumentum(LITE)2026 Q4決算 AIデータセンター向け光学部品の強さと高いバリュエーションを検証(Xサブスク)
https://x.com/kazu_fujisawa/status/2087433252407799922
●Coherent 2026 Q4 決算 AIデータセンターの「光」を握る企業(Xサブスク)
https://x.com/kazu_fujisawa/status/2087870181905170921
●Applied Materials(AMAT)2026 Q3 AI半導体装置の本命を事業・競争・バリュエーションから読み解く(Xサブスク)
https://x.com/kazu_fujisawa/status/2087790401768051193
●Lenovo 2026/27 Q1 決算 PC首位からAIデータセンター企業へ(Xサブスク)
https://x.com/kazu_fujisawa/status/2088124163177467908
●SMIC 2026 Q2決算 中国最大のファウンドリを読み解く(Xサブスク)
https://x.com/kazu_fujisawa/status/2088308213250945516
●Tencent 2026 Q2 決算 中国最大のスーパーアプリ企業をわかりやすく解説(Xサブスク)
https://x.com/kazu_fujisawa/status/2088315983341719920
●SandiskのInvestor Dayが示した「粗利率80%が複数年続く」衝撃
https://x.com/kazu_fujisawa/status/2089040281845022819
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米個別銘柄の週間パフォーマンス (2026/08/07-2026/08/14)

出所: Google Finance, Yahoo!Finance
香港個別銘柄の週間パフォーマンス (2026/08/07-2026/08/14)

出所: Google Finance, Yahoo!Finance
日本個別銘柄の週間パフォーマンス (2026/08/07-2026/08/14)

出所: 会社四季報、Yahoo!ファイナンス
直近1年の日経平均株価とインプライド・ボラティリティの推移

出所: 日経新聞社
直近1年のドル円とユーロ円の推移

出所: セントラル短資
イールドカーブ (2026/08/14)

出所: Bloomberg.com
主要通貨の週間パフォーマンス (2026/08/07-2026/08/14)

出所: セントラル短資
直近1年のS&P500種指数と原油価格の推移

出所: Yahoo!ファイナンス、Bloomberg.com
地域別株価指数とコモディティの週間パフォーマンス[USD] (2026/08/07-2026/08/14)
![地域別株価指数とコモディティの週間パフォーマンス[USD]](charts/Chart20260815_WrdEquity.png)
出所: iShares, Bloomberg.com
今週のマーケット・イベント
8月17日(月)
日4-6月期GDP(速報)
日6月第3次産業活動指数
米8月ニューヨーク連銀景気指数
米8月NAHB住宅市場指数
米6月対米証券投資
中国7月小売売上高
中国7月固定資産投資
中国7月鉱工業生産指数
8月18日(火)
日5年国債入札
米7月輸出・輸入物価指数
米7月住宅着工・建設許可件数
米7月鉱工業生産指数
米7月NAR仮契約住宅販売指数
独8月ZEW景況感指数
8月19日(水)
日6月機械受注
日7月訪日外客数
FOMC議事要旨(7月28日-29日開催分)
米20年国債入札
8月20日(木)
日7月貿易収支
日7月首都圏新築マンション
日20年国債入札
米8月フィラデルフィア連銀景気指数
米7月景気先行指数
8月21日(金)
日 7月全国消費者物価指数(CPI)
米8月製造業購買担当者景気指数(PMI)
米8月サービス部門購買担当者景気指数(PMI)
米8月総合購買担当者景気指数(PMI)
8月22日(土)
8月23日(日)